仕事におけるノウハウはいつも秘密にされます。
ネットには公開されず業務秘密とされるなど、ノウハウは「公開してはいけないもの」として扱われます。コミュニティ内でのみ共有される知識や技術は少なくありません。
では、その「ノウハウ」と呼ばれるものの正体は何なのでしょうか?
ノウハウを秘密にする人は多いですが、その正体を考えたことのある人はそこまで多くはありません。身の回りを見ても、多くの人が「なぜ」を考えずに秘密にしていることでしょう。
秘密にするのにもちゃんと理由があって、ノウハウの正体を考えれば秘密にされる理由もわかったりするものです。
目次
そもそもノウハウとは?
goo国語辞書ではノウハウについて、以下のように解説されています。
1 ある専門的な技術やその蓄積のこと。「仕事のノウハウをおぼえる」
2 技術競争の有力な手段となり得る情報・経験。また、それらを秘密にしておくこと。
出典:ノウハウ【know-how】の意味 - goo国語辞書
一般的にノウハウと呼ばれるものは2つ目のものが多く、秘密にされることの多さから当てはまるといえます。
- 公には公開されず、関係者の間でのみ共有される
- 知っていることで有利になる知識や技術
- 有料で販売されることもある
ここらへんが一般にノウハウと呼ばれるものの特徴です。
ノウハウには業務上秘密にしなければならないと注意がなされることがあり、多くの人は「なんとなく」ノウハウを秘密にします。
秘密にされる理由については
「なぜ秘密にしなければならないのか」
「漏れ出すことで損するのは誰か」
「ノウハウを知っていて得する人は誰か」
に着目すれば容易にわかり、勝敗を決めるというのも理解可能です。
しかしながら世の中にはノウハウを惜しげもなく後悔する人もいて、上記の質問や定義に矛盾を感じるかもしれません。
それはそれでちゃんと理由があるからで、ノウハウと呼ばれるものの正体を理解すればわかります。
ノウハウはどうやって出来るのか
ノウハウの正体を考えるカギは、どうやってノウハウができるかにあります。
何回もPDCAを回して試行錯誤したり、調べ物をしたりして出来上がるのがノウハウ。
仮説を立てて検証し、それが実際にうまくいけばノウハウとして記録されますし、逆にデータから導き出されるタイプのものもあります。
- データから導き出される
- 調べ物と実践から導き出される
データ採取には労力がいりますし、調べ物したり分析したりするのも時間やお金を使います。
つまるところ、
ノウハウは労力から生み出され、調べ物や試行錯誤に労力を投じた結果わかるものがノウハウです。
何回かやっているうちに勝つ方法がわかってきた。
調べ物をしたら勝つ方法がわかってきた。
これら以外にもお金を払うことでノウハウを得られる「情報商材」も世の中に存在し、ノウハウのための労力に対してお金を払っていると考えることができます。
たとえて言えば、ラーメン屋がその店独自の秘伝のスープを持っている場合、そのスープの製法はノウハウと言えるでしょう。見た目だけではわからない特別な技術や仕組みに対して、知的財産権という意味でのノウハウが用いられる場合が多いです。
出典:ノウハウという言葉の持つ意味と使われる場面|キャリアパーク[転職]
秘伝のスープというのはその製法を導き出すための労力があったからこそ秘伝とされています。
「タダ働きはしませんよ」という心理があるからこそ秘密とされるのであり、スープの製法は公には公開されないのです。
スポーツで勝つためには実践が重要と言われ、実際にステージに立つ回数を増やすことで試合に勝てるようになりますが、それはステージに立つことでノウハウが蓄積されるから。
すなわち試合における感覚や立ち回りがノウハウとして記録され、勝てる方法が身についているのです。
あの人はなぜノウハウを惜しげもなく公開するのか
ノウハウが労力から生み出され、データや調べ物から導かれることがわかれば、惜しげもなくノウハウを公開する人の心理も理解できます。
データにしろ調べ物にしろ、共通しているのは「情報を得る」ということ。
データからは「こうした結果、うまくいった」のような情報を得ることができ、調べ物からはある程度体系化された情報を得ることができます。
つまりはノウハウを導き出す際には取り組み方と結果、うまくいくパターンという情報を得ており、うまくいく方法をまとめたのがノウハウです。
これは言いかえれば、情報をどう解釈する・取り扱うかは人次第ということ。
たとえデータを入手したとしてもそれをどう活用するかは個人次第ですし、拾った情報に価値を見出すかどうかも個人次第です。
入手した情報を価値あるものだと考えれば、ノウハウを公開することもない。価値をそこまで感じなければ公開する。
ノウハウを公開する人にとってノウハウは単なるデータでしかなく、それをどう活用するかは人次第と考えているからこそ、ノウハウを公開するのです。
「データはあるけれど、それを使ってどうするの?」と考えるため、ノウハウの公開に対しても躊躇がない。
ノウハウはあくまでも「戦術」レベルのものであって、使い方という「戦略」レベルができないと意味がない。
ノウハウを惜しげもなく公開するのには、こういった心理があるのです。
さまざまな学問を身につけるメリット
ノウハウの中には「これ、すでに体系化されているよね」と感じるものもあります。
たとえば売れる商品の配置は心理学という形で一般化されていますし、会社の経営は経営学という形で一般化されているでしょう。
一見してノウハウに見えても実際には学問としてすでに存在している場合もあり、その場合には該当する学問を勉強することでまとまった知識が得られます。効率いいのはいうまでもありません。
ビジネスをやる人は心理学を学べ、経営学を学べというのはこういうのが理由です。
ノウハウよりももっとまとまった形で体系化されている「学問」というものを学べば、モレがなく効率よく学ぶことが可能です。
そして多くの学問に手を付けるメリットもこれで、ノウハウというモレのあるものではなく、モレのない体系的な知識が手に入ります。
いちいちデータ収集するまでもなく、ある程度予測を立てることが出来る。
だからこそ学問を幅広く学べと言われるのであって、実際にデータを取るよりも効率がいいから学問が推奨されるのです。
情報商材、実は代行業だった!?
ノウハウがデータ収集や調べ物から作られ、労力によって得られる点からは、ちょっと意外な事実が導けます。
ノウハウが労力によって得られ、有料でノウハウを買うというのは、情報を集める労力に対してお金を払うこと。
これを情報商材に当てはめると「商材屋はデータ収集代行」ということになり、データ収集に対する対価を払っているとも解釈できます。
ノウハウが有料で取り引きされるのはその分のデータ収集をしたからであって、データ収集や調べ物によるアウトプットに対してお金を払う。
そう考えた場合、商材屋というのはデータ収集代行みたいなもので、データが販売されるのと同じことをしているのです。
まとめ
ノウハウがコミュニティ内のみに留められる、ノウハウが有料で販売されるというのは、ノウハウが労力によって得られることの証拠です。
データ収集のための時間が惜しいからこそ人々は情報商材を買いますし、赤の他人のためのタダ働きがイヤだからこそノウハウは秘密にされるのです。
ノウハウを公開したくないというのはいいお店を秘密にしておきたい心理と似ていて、調べるための手間が関係しています。
秘密にしておこうというのは労力がそこに存在するからであり、わざわざ他人のためにデータ収集したくないという思考が存在するのです。