マニュアルづくりというものは面倒ですが、そうであるからこそそこには意外なメリットが隠されています。
どんな分野であれ「知恵」と呼ばれるものはあります。
それを暗記してやるだけなら誰でもできますが、一般化できるひとは少ないです。
マニュアル化は労力を使うし、自分だけがムダに仕事をするようなもの。
しかしマニュアル化によって知恵を知識に、知識をモデル化することで、新しい物を作り出せる可能性があります。
知恵のままではダメ
まず、知っていることが「知恵」のレベルで止まっていては先に進めません。
「知識」という形で言語化し、ある程度の普遍性をもたせるのが吉です。
マニュアル化をサボり、「知恵」のままにとどめておくのはラクです。
しかし、そのままでは決まったことしかできないでしょう。
感覚的なレベルの話を「知識」という形に言語化することで、ある程度発展的なことまでできるようになります。
そもそも「知恵」というのは細切れの知識みたいなもので、バックグラウンドがあってはじめて機能します。
前提となる限定的な環境があることが求められ、そこに普遍性という要素はあまり存在しません。
感覚でわかっていることでも、まずは「知識」に落とし込んでみましょう。
それによって見えてくるものがありますし、また精神的な影響も出にくくなる。
時間を取ってマニュアル化することで、その後の判断がラクになるのです。
知識からモデルへ
「知恵」を「知識」としてまとめるのでも十分ですが、そこからさらに発展させることも可能です。
それが「モデル化」というもの。
これは「知識」からさらに普遍性を強めたもので、自分の専門以外のところも守備範囲にできます。
この記事でいいたいのは何も、マニュアル化しろというレベルの話ではありません。
そこから先の話をしているのです。
学問というものがモデルを用いて考えられており、また複数の分野で共通することもある。
だとすれば、本質を見抜くことで「1を聞いて10を知る」みたいなことができます。
そのように複数の分野にまたがって使えるモデルを覚えれば、どんどん色んな分野に手を出すことが可能。それによって使える武器が増えるのは言うまでもありません。
離れた分野間で使えるモデルに気がつければ、まちがいなくその後の成長スピードは上がっていくことでしょう。
本質的なことがわかっているので、等価な問題に気づいては自分のものにしていける。
最大公約数を大きくする方向に動けば、キャパが急成長していきます。
モデル化すると色々と見えてくる
具体的に、モデル化のどういうところがいいのか。
それは
- 問題点に気づきやすくなる
- 理解がしやすくなる
というものです。
ひとつの分野をトコトン勉強するというのは、たしかに聞こえがいいです。
しかしそれは他分野のことを勉強しないのにほかなりません。
同じ問題でも、ある考え方では解決がむずかしくても、他の考え方を使うと容易に解けてしまうというのは結構あります。
つまりは取り組みやすさが目に見えるぐらいで変化するのです。
「新しい分野を勉強しているけど、何か今まで勉強してきたことと似ているなぁ。これ、もしかしたらできるかも!」
こういうのを増やしていけば、問題に取り組むモチベーションというのも出てくるはず。
そうして取り組んでいるうちに「そこにあるはずのものがない」ということに気づくことでしょう。
「どこが問題なのか」がわかるという点で、モデルを知るというのは重要なのです。
たとえば電気回路の抵抗、コイル、コンデンサなんて考え方は応用がきき、バネやダンパの話、エネルギー変換の話、果てには経済の話にも使えます。
それは電気回路の勉強をすれば、他の分野の勉強にもなるということ。
すなわちどこが問題なのかがわかりやすくなったり、メカニズム的な部分が理解しやすくなるなどいいことづくし。自分の武器が増えるのは言うまでもありません。
熱拡散方程式も単に熱関連の話で終わるということはなく、金融工学にまで使える話です。
解法が同じなのは当然のこと、コンピュータでどう計算すればいいのか、誤差の原因はどこにあるのかというところまでわかってしまいます。
このように、「ひとつのモデルがさまざまな分野に使える」というのはよくある話。
だからこそ本質を勉強するというのが大事なんです。
ニーズ探しのカギ
問題点がわかるとなれば、当然ニーズの発見にもつながります。
さまざまな分野に対してモデルを適用すれば、必ずや問題点が浮かび上がってくることでしょう。
「あるはずのものがない」というのに瞬時に気づけるのです。
これは言いかえれば演繹法。
すなわちモデルを使って考えていくことでニーズや問題点を探し、新たなアイデアを作り出しています。
そしてこれは、ニーズを探るうえでは常識だったりします。
ニッチなニーズを探るには、演繹法と帰納法を使い分けるのが一般的です。
しかし、大半のひとはデータから何かが出てくるものとしか思っておらず、そこからの進展はない。
そのような帰納法しかあてにしないスタイルでは早急に他のひとにパクられ、得られるものも少なくなります。
そこで演繹法で考えるのです。
「こういうデータが得られたから、これは売れる」で止まるのではなく、なぜそういう結果になったのかを考える。
「このような理由があって売れているのだから、こうすればもっと売れるのではないか」まで考えましょう。
演繹法でニーズを探った例としては、メガマックがわかりやすいかと。
あれは「不健康なものをトコトン食べたい」というニーズを探したものです。
アンケートには健康志向のものが欲しいというのが大半だったにも関わらず、不健康の象徴であるメガマックはバカ売れした。
それは「マクドナルドに行くならジャンキーなものを食べたい」「どうせなら思いっきり不健康なものにしてしまおう」というのを見抜けたがゆえなのです。
ニーズを発見するにはさまざまな手段がありますが、その中でもモデルを使うというのは非常に便利なやり方です。
これができるのとできないのとでは、最終的に結構なちがいが出てくることでしょう。
イノベーティブなやり方というのも大抵はこういうのから生まれてくるもの。
「異なる分野のものが出会ったときに、イノベーションが起こる」というのは、まさにこの考え方を言い表しています。
これ、時短術だ!
上記のように、モデル化は応用のカギです。
ひとつの分野での考え方が、ほかのことにも使えてしまう。
これは潰しがきくということでもあります。
教養としてモデルを覚えることは、必然的に勉強の効率化につながります。
いくつもの分野に使える武器を何個も持っているのですから、強いというほかない。
本質を理解するような勉強法を習得してしまえば、アイデア量産マシーンになれることまちがいなしです。
さらにモデルを見つける方法を一般化できれば、それはもう快適でしょう。成長スピードは格段に上がっていきます。
そのためには情報を処理する技術を学べばよく、ビジネス書に書いてあることを実践していけばいい話。
引用文献リストの使い方はその典型です。効率よく情報収集する方法が一般化されています。
ところで、勘のいいひとは気づいているかもしれませんが、これは時短術の一種です。
潰しがきくように勉強することで、トータルの時間消費をおさえる。こういう原理です。
潰しがきくような勉強のやり方はそのまま時間短縮につながります。
最初は気合で覚える部分も多く、一時的にはつらいかもしれませんが、最終的にかかった時間というのは個別で勉強するよりも少ないことが多い。
書いてあることをモデル化まで持っていくことが、結果として勉強を効率化します。
本に書いてある時点ですでに「知識化」されていますので、あとは一般化してモデルを見つけさえすればよい。
その理解に自分の知っているモデルを当てはめることで、また色々と見えてくることでしょう。
わかるひとにはわかるでしょうが、ここまでくると勉強そのものが楽しくなってきます。
楽しんで勉強できるとなれば、効率がいいのは当然のことです。そのような人物が優位に立てるのは言うまでもありません。
ゲーム感覚でことに当たれるひとが結果を出しやすいのも同じことで、主体性を持って取り組めるからパフォーマンスが向上します。
成長のコツは、そのような正のサイクルにいかにして自分を持っていくかにあります。
まとめ
自分が持っている「知恵」から一般性を見出して「知識」にし、そこからさらに一般性を探して「モデル」にしてしまう。こうすることで効率は急上昇します。
一般化、すなわちマニュアル化は面倒くさいのですが、そこを乗り切ってしまえばどんどん別方向に転用することが可能。
そのような面倒なことが、イノベーションを狙ううえでは欠かせません。
これを読んで「知恵」を「モデル」まで持っていくかはあなた次第。
短期的な視点でみれば「知恵」でもいいかもしれませんが、それではムダがなくせないでしょう。
単発で事にあたるのはたしかにラクです。しかしそれ以上の進展はありません。
本質を見ぬいてモデル化できるひとが、トータルでは勝ちやすいのです。
学校教育では「知識」レベルのことは教わるでしょうが、「モデル」レベルのことはあまり教わりません。
しかし物事を進めるうえで大事なのは「モデル」の方。
戦略レベルのことがわかるので、モデルを知っていれば初見の問題でもパパっと解けてしまいます。
そしてそのようなモデルこそが教養にあたるのです。